聖書は、半分だけ・・・

 僕が洗礼を受けたのは2000年のクリスマス、日本基督教団逗子教会において、でした。  だから、洗礼式の時にも、20年たった今も教団の信仰告白を告白しています。  ところで、その中の「旧新約聖書は、神の霊感によりて成り」・・・「神につき、救ひにつきて、全き知識を我らに与ふる神の言(ことば)にして」と告白するとき、この「全き」という言葉は、どう理解すべきでしょうか。  愚考するに、聖書に…

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21世紀の「バベルの塔」の理解

 創世記のバベルの塔のお話しは、普通は、人々がたった一つの言語しか持っていない世界が否定されたお話し、と理解されています。  しかし、I.イリイチが「シャドウ・ワーク」で指摘するように、人々がひとつの言語しか持っていない社会は、政策的に作り出されたものであって、ある時代以前には存在しなかったと考えられます。  実際、僕は行ったことはないけれど、海外に行けば、学歴とは無関係に、複数の言…

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腹ぺこイエス

1 日雇い労働者イエス  ナザレからやってきた青年イエスの生活誌については、ルカ福音書の断片的な記述を除けば、具体的なことは分りません。  しかし、ここ100年ほどの一部の国々を除けば、世界中の大部分の人々が貧しい小作農として自給自足的な暮らしをしていたことは分っています。  だから、青年イエスがそうした小作農であった可能性も高いと思います。  実際、農業に関する譬え話をたくさん…

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宗教改革・グレゴリウス改革・ロックンロール

 F.グイッチャルディーニの「イタリア史」は10年ほど前に日本語全訳が出版され、この訳業はまことに偉業と賞するべきだと思います。  ただし、いかに訳文が良くこなれているとは言えども、ハードカバーで全9巻、お値段も4万円を超え、けしてお手軽に読める本ではありません。  そこで、ちょっとしたつまみ食いをご提供しようというわけですが、ここで注目するのはローマ教皇です。  この本は、1,4…

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I.イリイチ「シャドウ・ワーク」再読(覚書)

 本書の初訳は1982年に出版されており、僕が最初に本書を読んだのは恐らく1984年のように記憶している。  そして、今回、ついに図書館から借りだして再読に及んだのだけれど、本書がもたらす衝撃は約40年を経た今日にもまったく色あせない。  本書を始めイリイチの業績を積極的に日本に紹介した玉野井芳郎氏はすでに亡く、また、イリイチ本人も亡くなってしまった。  僕は、彼らの警告を活かした…

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お尋ねへのお答え

「女性の性欲を否定する19世紀的倫理観」という発言についてお尋ねをいただきましたので、4,000字を超える長文で失礼ですが、以下によりお答えとします。 1 共同体による「性欲」の管理について  もし、女性に性欲が無いなら、私達はみんな性的暴力の結果としてこの世に生を受けたということになるでしょう。  しかし、現実がそのような想定に矛盾するなら、女性にも男性と同様の性欲があり、そ…

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赤ん坊が世界を変える(2019年12月15日 CS中高科奨励原稿)

 今朝も例によって、一言だけ覚えて帰ろう!シリーズでお話ししたいと思います。  今朝の一言はルカによる福音書1章31節「あなたは身ごもって男の子を産むが、その子をイエスと名付けなさい。」という言葉です。  この言葉は、貧しい娘マリアが産んだイエスという赤ん坊が世界と歴史を塗り替えると宣言する言葉ですが、今朝は、妊娠出産の歴史についてのお話しから始めようと思います。  実は、20…

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全知全能とはどういうことか

(以下の文章もCS中高科奨励の原稿として書きましたが、内容的にちょっと過激すぎるので、ボツにしました。でも、面白いと思っているのでここにアップします)  今朝も例によって、一言だけ覚えて帰ろう!シリーズでお話ししたいと思います。  今朝の一言はルカによる福音書1章37節「神に出来ないことは何一つない」という言葉です。  出来ないことは何一つない、全知全能で完全無欠の存在であるということ…

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22世紀の出エジプト

(以下の文章はCS中高科奨励の原稿として書きましたが、哲学から世界史に話題が及んでいて、中高生にはちょっと難しいし、内容的にも過激すぎるので、ボツにしました。でも、面白いと思ったのでここにアップします)  今朝も例によって、一言だけ覚えて帰ろう!シリーズでお話ししたいと思います。  今朝の一言はルカによる福音書1章37節「神に出来ないことは何一つない」という言葉です。  私達は日々…

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巷説(ちまたのうわさ) 使徒ヤコブの裏切り

1 お断り  これから述べることは私の穿ちすぎた空想の産物です。  いかなる、聖書的な証拠や神学的な論証に基づくものではありません。  ただただ、今日的な常識に沿って考え出したひとつのフィクションとしてお読みください。 2 使徒言行録を深読みする  さて、使徒言行録21:17以下を日誌風に書くと以下のようになります。  第1日目 パウロたち一行がエルサレムに到着 …

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「コミュニケーションの社会史 」 前川 和也 編著(ミネルヴァ書房2001/8/1)をオススメします

 多くの方に読んでいただきたい本なので、ここで簡単に紹介をさせていただきます。  まず、収録論文は以下の通り。 Ⅰ 遠くに伝える 第1章 「初期メソポタミアの手紙と行政命令文」前川和也 第2章 「広域情報伝達システムの展開とトゥルン・ウント・タクシス家― 一六、一七世紀における帝国駅逓の拡充を中心に」渋谷聡 第3章 「メディアとしての聖地巡礼記―中世地中海世界の情報網」高田京比…

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ラーメンという文化

1 昔ながらの札幌ラーメン  札幌に行ったら、昔ながらの札幌のラーメンを食べたいのです。  では、札幌のどこに行ったらそういうラーメンが食べられるか。  実は、先週の土曜日に法事のために札幌へ行った際、新札幌駅で乗り換えるついでに、駅ビルに入っている「龍竜」さんで味噌ラーメンをすすっていたら、あぁ、ホンモノの昔ながらの札幌ラーメンの味、としみじみ感動したのでした。  …

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「分らない話」の話~あるいは、「矛盾」について

1 ホントにあった「分らない話」  先日、教会の集会なかで、ある姉妹が神さまの恵みについて証をなさいました。  彼女は、ご自分の貧しい生い立ちや、教会との出会い、現在、取り組んでいるご奉仕について一生懸命にお話しされ、私たちも熱心に耳を傾けました。  しかし、彼女が何を言いたいのか、実はよく分りませんでした。  この姉妹は決して、愚かな女性ではありません。  家庭の主婦とし…

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教会のダブル・スタンダート

1 初代教会のダブル・スタンダード  使徒言行録21:20-25には、パウロ捕縛のきっかけを作ったエルサレム教会の長老たちの指示が書き残されています。  この指示をよく読むと、律法についての初代教会のダブル・スタンダード(以下「2重基準」)があることに気がつきます。  20節から24節では、ユダヤ人キリスト者が律法を遵守すべきことを述べています(以下「基準A」)。  一方、25節…

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新共同訳の気になる訳文

1 問題提起  以下にお示しするのは新共同訳のマルコ福音書7:24、有名なシリア・フェニキアのお話しの導入部分です。 「イエスはそこを立ち去って、ティルスの地方に行かれた。ある家に入り、だれにも知られたくないと思っておられたが、人々に気づかれてしまった。」  この部分を新改訳は次のように訳しています。 「イエスはそこを出てツロの地方へ行かれた。家に入られたとき、誰にも知られた…

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愛は決して滅びない(9月8日CS中高科奨励原稿)

 今日は、ただ一言、この「愛は決して滅びない」(コリントの信徒への手紙一 13:8a)という言葉を憶えて帰って欲しいと思います。  私たちが誰かを愛してしまったら、その人を永遠に、死ぬまで愛し続けると確信します。  そして、結婚式になれば、牧師先生の前で永遠の愛を誓います。  それが「愛は決して滅びない」と言う真理の第1の意味、第1の姿です。  しかし、いつの日か、その愛する…

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負うた子に叱られる!?

 ルカによる福音書11章19節を新共同訳は以下のように訳しており、新改訳もほぼ同様です。 「わたしがベルゼブルの力で悪霊を追い出すのなら、あなたたちの仲間は何の力で追い出すのか。だから、彼ら自身があなたたちを裁く者となる。」  一方、文語訳は以下のようです(略字に変換、一部をのぞきフリガナは省略)。 「我もしベルゼブルによりて悪鬼を逐ひ出さば、汝らの子は誰によりて之を逐ひ出すか。こ…

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H.ベルクソン「宗教と道徳の二つの源泉」をお奨めします

 H.ベルクソンの「宗教と道徳の二つの源泉」を読みました。  すべてのクリスチャンにお奨めしたいという趣旨で以下の記事を書きます。  どうぞお付き合い下さい。 1 驚くべき先見性  実は、この本、30数年前の学生時代に中公世界の名著の一冊として読んだことがありました。  その時にも魅力的な本だとは思ったのです。  しかし、このたび読み返して、その時の理解不足を痛感する…

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紙・IT・通貨

1 イリイチのやり残したこと  晩年のイヴァン・イリイチは、当時、本格化していたIT革命とはなにか、という疑問への答えを求めて12世紀ルネサンスの研究に向かいました。  その成果は、1988年の「ABC」と1993年の「テクストのぶどう畑で」の2冊の著作に結実しましたが、残念ながら2002年に召天しました。  イリイチは、12世紀後半に「紙」が普及したことが知の世界に与えた…

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「神の国を発見!」(2019年8月18日夕礼拝奨励原稿)

 今日は小宮山牧師がご不在なので、私が代わりに奨励を仰せつかりました。  私には聖書の解き明かしはできませんので、あくまでも私の理解、私の証としてお聞きいただきたい、と最初にエクスキューズを振っておいて、お話しを始めようと思います。 1 ハルトの教えてくれたこと その1  さて、6月の末に札幌の叔母が93歳で亡くなって、お通夜と葬儀に行ってきました。  生涯独身ですごした人で…

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復活について

 直前の記事でも申し上げましたが、8月10日の福嶋揚氏主催のセミナーの意見交換の中で、キリスト者は一体、どうして復活を信じられるのか、信じられない!という趣旨の発言がありました。  この点については、すでに星の数ほどの証がなされているはずであり、今更、私如きが贅言を加えるまでもないとは思いますが、ここは私自身の理解の整理のために愚考するところを申し上げてみたいと思います。 1 普通の…

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新たな群れを生み出す

 さる8月10日、福嶋揚氏主催のセミナーに出席したら、意見交換の中で新約聖書の記事の史的信憑性を巡る発言がなされました。  すなわち、弟子たちに受難と復活を預言したイエスの発言は、後世のでっち上げとすることが定説である、との議論です。  そのやりとりをきっかけに思うところあり、まずは聖書の史的信憑性について、次に、その伝道的な意義について愚考するところを申し上げます。 *もう一つ、…

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「律法学者」という誤訳?!

 聖書にたびたび登場する「律法学者」という言葉が誤訳だなんて、疑ったことすらありませんでした。  だから、律法学者が一定の社会的なグループとして存在するからには、イエスやパウロの時代のエルサレムには、今日のイスラム世界におけるマドラサのような、教典を講じ、学ぶ学校があったにちがいない、そしてその教師が律法学者であり、星雲の志を抱く若き学生がパウロであったにちがいない、とずっと思っていました…

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教会学校の説教を考える

 教会学校の中高科で説教奉仕にお用いいただいて何年にもなります。  大体、半年に2回か3回の奉仕ですが、何回やっても納得のいくお話しができません。  その理由をいくつか考えてみます。 理由1 説教時間の制約  多くの教会学校の奉仕者の実感からいうと、幼稚児や小学生はもとより、中高生を相手にするときでさえ、お説教はせいぜい15分が限界、できれば10分くらいに収めた方がいいようで…

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希望とはなにか~7月14日CS中高科説教原稿

【使徒言行録 8章4~8節】 交読詩編 146 4さて、散って行った人々は、福音を告げ知らせながら巡り歩いた。 5フィリポはサマリアの町に下って、人々にキリストを宣べ伝えた。 6群衆は、フィリポの行うしるしを見聞きしていたので、こぞってその話に聞き入った。 7実際、汚れた霊に取りつかれた多くの人たちからは、その霊が大声で叫びながら出て行き、多くの中風患者や足の不自由な人もいやしてもらった。…

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ドゥルシラ・コーネル「”理想”を擁護する」をお読みください

 アマルティア・センの「正義のアイデア」の中で言及があったので、図書館から借りて読みました。  具体的な結論があるのではありません、しかし、ヒントがたくさんある、という意味ではぜひ多くの方にお読みいただきたいと思いました。  第1章と第2章は湾岸戦争、9・11、イラク戦争という時代に正戦論、つまり正義の戦争 Just Warを主張する人々への反論。  それまで、左派リベラルとし…

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大量消費社会と聖書

 新改訳のエゼキエル書8:3で「ねたみを引き起こすねたみの偶像」という言葉に出会ってハッとしました。 1 訳語の検討  この「ねたみ」の語を新共同訳は「激怒を起こさせる像」と訳しています。  察するところ、翻訳に携わった神学者の先生方は神学のことしか知らないままに、分かりやすい訳語を求めてこのように訳されたのだと思います。  しかし、です。  たとえば「welfare ec…

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ジェンダーは誰のために必要か

1 まずは本のご紹介  川口恵美子さんの「戦争未亡人  被害と加害のはざまで」(ドメス出版、2003)を読みました。  内容を簡単に紹介すると、昭和13年頃からサンフランシスコ講和条約までの期間の女性史で、タイトルにある通り、戦争によって夫を失った女性たちの辛酸を描いたものです。  しかし、この本の真に驚くべき点は、ほぼ100年前の歴史であるにもかかわらず、そこに描かれている女…

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「滅び」を英語で言うと・・・

 昨日の主日礼拝のお説教は「狭き門」、つまりマタイ7:13~14だったのです。  その中で「滅び」という言葉を英語ではなんて言うんだろうと思ってBibleGatewayで調べたら、New English Translation訳では「destruction」の訳語を当てているのです。  昔、よくテレビに出ていたデストロイヤーという覆面レスラーがパッと頭に浮かんできて、ビックリして15…

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「あなたの鞭、あなたの杖/それがわたしを力づける」とは

  「法律に抵触しないなら、いかなるビジネスでも認められるのか」という問いには、どのような答えがあり得るでしょうか。  肯定的な立場からは、例えば以下のような答えがあり得るでしょう。  肯定意見その1 法律や判例は、国民の自由を確定するためにあるのだから、これらに抵触しない限り、当然に、認められる。  肯定意見その2 もし抵触していても罰則規定がないならやがて野放しになる筈であり、…

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