アナル派的福音書読解のすすめ(後編)

1 アナル派が発見した貧乏人  産業革命以前の社会、生産性の水準が人々の生活を維持のが精一杯の社会では、ほとんどの人は農業と農地に縛り付けられて露命を維持していました。  また、より少数ながら都市に住んで職人として生きていた人たちもいました。  しかし、そのいずれにあっても、農村なら村落共同体、都市ならば職人達の共同体(ギルド)に所属し、その共同体のなかで期待された役割を果…

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アナル派的福音書読解のすすめ(前編)

 先日、教会の人たちと昼食をいただいているうちに、つい、感染対策の遠慮も忘れてアナル派について熱弁を振るってしまいました。  アナル派は、その名称がフランス語で年報を意味する「Annales」に由来する歴史学者の学は、ネット上にはアナール派、アナール学派などの見出し語も見られます。  詳しくはネット情報を参照していただきたいのですが、現代の我々が忘れてしまった近代以前の暮らしや社…

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悔い改めにまさる伝道なし(8月23日信徒奨励原稿)

[聖書個所] ①イザヤ書 2:7-9 ②マタイによる福音書 19章 16-22節 1 神に背く民  今朝はまず、イザヤ書の2章7~9節を読んでいただきました。  イザヤ書は約2700年前、預言者イザヤに与えられた神の言葉ですが、その言葉は同時に、神に背を向けて、自ら崩壊してゆく社会を生きた同時代人の証言となっています。 今朝は、そのうち7節と9節に注目したいと思います。 …

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無能な教師の勘違い

 私の所属する教会に神学生が与えられて2年目(感謝!)、ハタから見ると、毎週何本ものレポートに責められて、日々、大奮闘、喘息持ちなのに大丈夫かな、とみんながいつも心配しています。  そもそも、ご本人には口が裂けても言えないけれど、なんでそんなにたくさんのレポートを書かなければならないのか、正直、クビをかしげざるを得ません。  例えば、ウィトゲンシュタインやソシュールの講義録を見て…

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「ヨナのしるし」を考える

 フランスの哲学者、J=P・デュピュイは著書「ありえないことが現実になるとき―賢明な破局論にむけて 」の中でドイツの哲学者、ハンス・ヨナスを引用しながらヨナ記について言及しています(ヨナスは未見)。  環境破壊や世界的な格差拡大の結果、例えば9.11や3.11のような危機がやがて必ず起こることを私たちは知っているのに(そして現にコロナ騒動の渦中にあるのに)、何をすべきかを論じてみても何もで…

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家庭礼拝の誕生

 フィリップ・アリエスの「<子ども>の誕生」を数十年ぶりに読み返しました。  こんなに面白い話が満載だったっけ、と思いながら読んでいたら、第3部、336ページあたりから家庭礼拝の歴史が出てきたのでご紹介します。  この本は、15~17世紀において、子どもと大人が社会的に分離していき、現代のような家庭が誕生する経緯を研究している本ですが、その中で15世紀頃から最年少の子…

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「超実体的な」パン

 主の祈りの以下の部分について、ネットで調べるとAがカソリック、Bがプロテスタントの一般的なようですが、その内容に大きな違いはありません。  A わたしたちの日ごとの糧を今日もお与えください。  B 我らの日用の糧を今日も与えたまえ  しかし、「中世思想原典集成 精選 6」を読んでいたところ、「私達の超実体的なパンを今日も私達に与えてください」という一節に出会いました(314…

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「崩壊学」のお奨め

 パブロ・セルヴィーニュ, ラファエル・スティーヴンス著「崩壊学」をぜひご一読いただくよう、お奨めします。  まず、本書の大づかみを申し上げると・・・  国際的な金融、サプライ・チェーン、化石燃料市場などの複数の複雑系が絡まり合った巨大な複雑系となった今日の世界は、以下のように崩壊が確実である。 「複雑系科学が発見したのは、複雑系システム(経済や生態系が入る)はある閾を超え…

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教会とバラバラの人々

 今日の日本の最大の問題は人々がバラバラになっていることだ、と申し上げました。  そのような視点で聖書を読むと、面白いことに、聖書の中の人々はいつどんな状況になってもバラバラにならないのです。  もちろん、旧約聖書の中には戦いがたくさん描かれますが、それらは共同体が一致して戦った他民族との戦いか、自らの共同体における権力争いのいずれかであって、共同体が散り散りになっていくというこ…

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ローマ市民サウロ

 ある姉妹が子どもたちに向けて使徒9:1~19のお話しを始めるに当たって「ユダヤ人社会の自信たっぷりのエリート、サウロ」と述べておられます。  私自身もかねてからそのような認識を持っていましたので、原稿を拝見したときには、思わず大喝采を送りたい気持ちになりましたが、この際ですので、この点について愚考することを少し掘り下げておきたいと思います。  それはパウロという青年の人間性の表面に…

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バラバラ

 今日の日本における最大の問題は、人々がバラバラになっていること、です。  例えば、日本の非正規労働者は約4割で、その多くが女性と若年者です*。  非正規労働の問題点は色々あると思いますが、その最大の問題はほとんどの人がバラバラになっている、ということです。  例えば、非正規労働者の多くが週に3、4日のシフト勤務をしていますが、そうのような働き方になると一緒に働く人や前後の…

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神を殺しに行く者

 現に約70億人の人間が地球上に生きていて、そのうちには、ホンモノかニセモノかは別として、なんらかの神を見上げる民がおそらくかなり広汎に分布している、と私達は経験的に知っています。  ところで、始めて神を発見し、または神がその発見を与えた人間は誰だったのでしょうか。  昔、読んだ小説に「ムーンゲイザー」、つまり月を眺める者という名前のお猿さんが描かれていました。  仲間のお…

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テレビを見るとバカになる?

 子どもの頃にそんなことを聞かされたせいではないと思いますが、高校生の頃からだんだんとテレビから遠ざかり始め、今ではテレビを一切見なくなりました。  だから、NHKの受信料を節約し、部屋を広く使うために、テレビを捨ててしまいたいくらいなのですが、家内が反対するので辛抱しているというのが我が家の現状です。  もちろん、テレビを見ない結果、賢くなったという事実は一切ないのですが、このごろにな…

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礼拝休止についてとても偏った意見

1 設問の誤りについて  評価不能なリスクを前に、進むか、引き返すか、という選択をしたら、当然、引き返すという結論しか出ないはずだ。  一寸先が闇なのに、無闇に進むのは愚か者である、と誰もが考えるだろう。  しかし、本当にそうだろうか。  例えば、車を運転するときに、そのリスクを完全に評価することは不可能だ。  しかし、それでも多くのドライバーは始業点検を行い、…

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腹は借り物・・・

 昨日、ある古い文書*を読んでいて突然気がついたことがあったのです。  今日、私達はみな、父親と母親の両方の遺伝情報を受け継いでいるということを知っています。  つまり、女性の体内に男性の精液が浸入しただけでは子どもは生まれない、女性の卵子と結合してはじめて妊娠が始まる、とみんなが知っているということです。  しかし、近代以前においては、妊娠は男性の「種まき」だけで開始され、女…

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預言者イエス?

 「預言者は故郷では尊敬されない」という趣旨のイエスの発言は、共観福音書すべてに残されています。  だから、イエスがそのような発言をしたことは確実ですが、だとすると次なる疑問はイエスが自分を「預言者」だと思っていたのか、という点になります。  一つ仮説を立てましょう。  メシアと預言者はまったく違う、という仮説です  つまり、もし、イエスが自分を預言者であると言い表したのなら…

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罪とは何か

 この頃、両義性とか二律背反とかの言葉がしきりに思い浮かぶ。  若い頃にも、そんな頃があって、しかし、あの頃は、あれかこれか、という問題として考えていた。  しかし、今、考えているのは、あれもこれも選べないような両義性や二律背反。  例えば、マタイ13:9にある「耳のある者は聞きなさい」というイエスの言葉。  そして、その少し後の14b節でイザヤの預言を引用して「あなたた…

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教会のお金の話

 最近になって、教会や献金についての記事を熱心にアップしているブログの存在を知りました。  なるほどなぁ、世間の人はそんな風に見ているのかぁ、と大変興味深く感じましたし、寝たきりになった高齢教会員の献金を届けに見える息子さんの硬く無愛想な表情も、あぁそういうことか、と思わず納得させられました。  せっかく、なるほどなぁ、をいただいたのも良いキッカケかもしれないません。  この機会に、献…

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教会のダウンサイジング

   余裕のある、贅沢な暮らしの中で身につけた美味しい生活習慣がやめられなくて、やがて人間ドックに行く度に特定の検査値が常に引っかかってしまう、という状態を生活習慣病というと言うのだと思います。  僕自身も、毎晩の晩酌をやめられなくて、肝臓周りの検査値がいつも赤字表示されてしまうので、エラそうなことは言えませんが、しかし、そのような我が身に引き比べて痛感するのは、今日の多くの教会も高度経済成…

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聖書は、半分だけ・・・

 僕が洗礼を受けたのは2000年のクリスマス、日本基督教団逗子教会において、でした。  だから、洗礼式の時にも、20年たった今も教団の信仰告白を告白しています。  ところで、その中の「旧新約聖書は、神の霊感によりて成り」・・・「神につき、救ひにつきて、全き知識を我らに与ふる神の言(ことば)にして」と告白するとき、この「全き」という言葉は、どう理解すべきでしょうか。  愚考するに、聖書に…

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21世紀の「バベルの塔」の理解

 創世記のバベルの塔のお話しは、普通は、人々がたった一つの言語しか持っていない世界が否定されたお話し、と理解されています。  しかし、I.イリイチが「シャドウ・ワーク」で指摘するように、人々がひとつの言語しか持っていない社会は、政策的に作り出されたものであって、ある時代以前には存在しなかったと考えられます。  実際、僕は行ったことはないけれど、海外に行けば、学歴とは無関係に、複数の言…

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腹ぺこイエス

1 日雇い労働者イエス  ナザレからやってきた青年イエスの生活誌については、ルカ福音書の断片的な記述を除けば、具体的なことは分りません。  しかし、ここ100年ほどの一部の国々を除けば、世界中の大部分の人々が貧しい小作農として自給自足的な暮らしをしていたことは分っています。  だから、青年イエスがそうした小作農であった可能性も高いと思います。  実際、農業に関する譬え話をたくさん…

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宗教改革・グレゴリウス改革・ロックンロール

 F.グイッチャルディーニの「イタリア史」は10年ほど前に日本語全訳が出版され、この訳業はまことに偉業と賞するべきだと思います。  ただし、いかに訳文が良くこなれているとは言えども、ハードカバーで全9巻、お値段も4万円を超え、けしてお手軽に読める本ではありません。  そこで、ちょっとしたつまみ食いをご提供しようというわけですが、ここで注目するのはローマ教皇です。  この本は、1,4…

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I.イリイチ「シャドウ・ワーク」再読(覚書)

 本書の初訳は1982年に出版されており、僕が最初に本書を読んだのは恐らく1984年のように記憶している。  そして、今回、ついに図書館から借りだして再読に及んだのだけれど、本書がもたらす衝撃は約40年を経た今日にもまったく色あせない。  本書を始めイリイチの業績を積極的に日本に紹介した玉野井芳郎氏はすでに亡く、また、イリイチ本人も亡くなってしまった。  僕は、彼らの警告を活かした…

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お尋ねへのお答え

「女性の性欲を否定する19世紀的倫理観」という発言についてお尋ねをいただきましたので、4,000字を超える長文で失礼ですが、以下によりお答えとします。 1 共同体による「性欲」の管理について  もし、女性に性欲が無いなら、私達はみんな性的暴力の結果としてこの世に生を受けたということになるでしょう。  しかし、現実がそのような想定に矛盾するなら、女性にも男性と同様の性欲があり、そ…

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赤ん坊が世界を変える(2019年12月15日 CS中高科奨励原稿)

 今朝も例によって、一言だけ覚えて帰ろう!シリーズでお話ししたいと思います。  今朝の一言はルカによる福音書1章31節「あなたは身ごもって男の子を産むが、その子をイエスと名付けなさい。」という言葉です。  この言葉は、貧しい娘マリアが産んだイエスという赤ん坊が世界と歴史を塗り替えると宣言する言葉ですが、今朝は、妊娠出産の歴史についてのお話しから始めようと思います。  実は、20…

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全知全能とはどういうことか

(以下の文章もCS中高科奨励の原稿として書きましたが、内容的にちょっと過激すぎるので、ボツにしました。でも、面白いと思っているのでここにアップします)  今朝も例によって、一言だけ覚えて帰ろう!シリーズでお話ししたいと思います。  今朝の一言はルカによる福音書1章37節「神に出来ないことは何一つない」という言葉です。  出来ないことは何一つない、全知全能で完全無欠の存在であるということ…

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22世紀の出エジプト

(以下の文章はCS中高科奨励の原稿として書きましたが、哲学から世界史に話題が及んでいて、中高生にはちょっと難しいし、内容的にも過激すぎるので、ボツにしました。でも、面白いと思ったのでここにアップします)  今朝も例によって、一言だけ覚えて帰ろう!シリーズでお話ししたいと思います。  今朝の一言はルカによる福音書1章37節「神に出来ないことは何一つない」という言葉です。  私達は日々…

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巷説(ちまたのうわさ) 使徒ヤコブの裏切り

1 お断り  これから述べることは私の穿ちすぎた空想の産物です。  いかなる、聖書的な証拠や神学的な論証に基づくものではありません。  ただただ、今日的な常識に沿って考え出したひとつのフィクションとしてお読みください。 2 使徒言行録を深読みする  さて、使徒言行録21:17以下を日誌風に書くと以下のようになります。  第1日目 パウロたち一行がエルサレムに到着 …

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