アナル派的福音書読解のすすめ(後編)

1 アナル派が発見した貧乏人  産業革命以前の社会、生産性の水準が人々の生活を維持のが精一杯の社会では、ほとんどの人は農業と農地に縛り付けられて露命を維持していました。  また、より少数ながら都市に住んで職人として生きていた人たちもいました。  しかし、そのいずれにあっても、農村なら村落共同体、都市ならば職人達の共同体(ギルド)に所属し、その共同体のなかで期待された役割を果…

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アナル派的福音書読解のすすめ(前編)

 先日、教会の人たちと昼食をいただいているうちに、つい、感染対策の遠慮も忘れてアナル派について熱弁を振るってしまいました。  アナル派は、その名称がフランス語で年報を意味する「Annales」に由来する歴史学者の学は、ネット上にはアナール派、アナール学派などの見出し語も見られます。  詳しくはネット情報を参照していただきたいのですが、現代の我々が忘れてしまった近代以前の暮らしや社…

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家庭礼拝の誕生

 フィリップ・アリエスの「<子ども>の誕生」を数十年ぶりに読み返しました。  こんなに面白い話が満載だったっけ、と思いながら読んでいたら、第3部、336ページあたりから家庭礼拝の歴史が出てきたのでご紹介します。  この本は、15~17世紀において、子どもと大人が社会的に分離していき、現代のような家庭が誕生する経緯を研究している本ですが、その中で15世紀頃から最年少の子…

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湯澤規子さんを読もう!

 今年読んだ本の中で、湯澤規子さんの「胃袋の近代」はビンゴ!な一冊でした。  そこで、知人にお奨めしたところ、「読んだよ、面白かったよね」という反応。  さらに別の知人にお奨めしたら「図書館で別の本、“7袋のポテトチップス”を借りて読んだら、面白かったです」というのです。  つまり、僕だけではなくて、皆さんにもビンゴだったという事なので、もっと多くの方にお読みいただきたいと思い、以下に少し…

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牽強付会

 柄谷行人さんの「世界史の構造」をお奨めいただいたので、図書館から借りて読み始めたのですが、残念ながら、最初の方のわずかひとつまみ、「序章」を読み終わったところで、ため息をつきながら図書館に返しに行ってしまいました。  その理由は大きく二つあります。 1 理由その1~人を見ない  「現在の先進資本主義国では、資本=ネーション=ステートという三位一体のシステムがある。それはつ…

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頭を冷まして「頭」を冷やす Part7 残された矛盾~自民党を野党に

 私は本稿の冒頭近く、「資本主義経済」が自由にルールを改変している、と書きました。  一方で、最低賃金や労働時間規制などのルールを改変して、そうした資本主義経済の働きにブレーキをかけることを提案しました。  これは、矛盾した提案だと言うことに、お気づきの方も多いでしょう。  つまり、今、ルールを決める力は向こう側にあって、私たちの側にはないからです。  しかし、私たちも頭を冷やして現実の…

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頭を冷まして「頭」を冷やす Part6 不便になることの楽しみ

 欧州では日曜日に商店がお休みなのは当たり前だそうです。  聞き及んだところでは、ロンドンでもパリでも観光客のお目当ての通りだけは日曜日にお店を開けているそうですが、それ以外のお店はみなお休みだそうです。  それは不便なことでしょうか。  資本主義経済という「頭」を冷ますためには、実は私たちみんなの頭を冷ます必要がある、というのが実は私の主張の核心です。  私の子供の頃の正月三が日はすべ…

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頭を冷まして「頭」を冷やす Part5 「頭」を冷やすための具体策

 それではどうするか、ということについて、1970年代に「プラグを抜く」という提案をしたのはイヴァン・イリイチでした。(注1)  この提案を私の述べてきた説明に沿って言い換えるならば、「頭」を切り落としても息の根を止められないなら、ある程度、継続的に「頭」に冷や水をかけて、「頭」を冷ましてやる、と喩えてみたいと思います。  つまり、資本主義経済が2階部分の物流と金融の流量や速度を拡大し、そこ…

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頭を冷まして「頭」を冷やす Part4 だったら「頭」を切り落とすか

 さて、「頭」である資本主義経済が、自分たちの利益を極大化するために政治を操り、ルールを自由に改変してしまい、多くの労働者が搾取の元に隷属させられている現状を改めるためにはどうするか。  一つの選択肢は、「頭」を切り落とすことです。  そして、ロシア革命によって農民と工場労働者の福祉向上を極大化するための計画経済を目指したソビエト連邦の成立は、まさしくそのようなものでした(注)。  しかし…

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頭を冷まして「頭」を冷やす Part3 ルールを操る資本主義経済の姿

 ここで少し話題を変えて、資本主義経済がどのように自分の都合の良いようにルールを改変するか、その実例をお示ししようと思います。  私がそのことを痛感したのは労働者派遣法の平成27年改正の時でした。  労働者派遣法は、昭和60年の成立以来、繰り返し規制緩和のための法改正を繰り返してきました。  しかし、平成24年の法改正は当時の民主党政権下で初めて規制を強化する改正が行われました。  ただ…

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頭を冷まして「頭」を冷やす Part2 資本主義経済と物流

 資本主義経済は市場経済から立ち上がったものであるとはいえ、「頭」部分であるからには「胴体」や「足腰」なしには成り立ちません。  つまり、物流と金融という「胴体」なしには資本主義経済は利益を上げられない、と言うことです。  しかし、このことを裏返すと、資本主義経済が利益を上げるためには、物流と金融にかける経費を最小化し、場合によってはそこからも利益を上げる必要があると言うことになります。(注…

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頭を冷まして「頭」を冷やす Part1 「資本主義経済」を描写する

 ここではF.ブローデルの「物質文明・経済・資本主義」の示されているモデルを参考にお話を進めてきたいと思います。  さて、「市場経済」とは、ある品物をA地点からB地点に運ぶ「物流」と、その逆の方向に代金を回収する「金融」の働きの集まりです。  普通は、物流と金融の働きの両端には商人がいて、その人たちは対等な立場で向き合っています。  しかし、時を経るにつれて、商人の中から力の強い者が現れて…

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キリストはエボリで止まった

 カルロ・レーヴィ「キリストはエボリで止まった」(岩波文庫)を読みました。  内容は、ファシスト政権下の1935年からほぼ1年間にわたって南イタリアの寒村に滞在した著者の目に映った前近代的な村の暮らしや人々の物語です。  この衝撃的なタイトルは、本書の冒頭にいきなり飛び出してきて、文明や救済はこの寒村にはやってこなかった、という寒村の人々の怨嗟の言葉であることが示されます。 …

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F.ブローデル「地中海」再読

 お仕事を辞めたら再読したいと思っていた本がいくつもあって、まず最初に読みたかったのが旧新約聖書でした。  これについては退職後すぐに読み始めて6月の末に終わったので、次なる候補だったフェルナン・ブローデルの「地中海」を今読み進めているところですが、これがまた面白い。  最初に読んだときは図書館からハードカバー版全6巻を借りてきて読んで、次にソフトカバー版全10巻が出たのを機に自前で…

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