F.ブローデル「地中海」再読

 お仕事を辞めたら再読したいと思っていた本がいくつもあって、まず最初に読みたかったのが旧新約聖書でした。

 これについては退職後すぐに読み始めて6月の末に終わったので、次なる候補だったフェルナン・ブローデルの「地中海」を今読み進めているところですが、これがまた面白い。

 最初に読んだときは図書館からハードカバー版全6巻を借りてきて読んで、次にソフトカバー版全10巻が出たのを機に自前で購入して再読し、今回が3回目になるわけで、今のところ4巻目の終わりが見えてきたあたり。

 この段階で、面白かった言葉を二つ紹介したいのですが、一つ目は次のようなもの。

 「支配者というものは専門家の意見には耳を貸さない」

 この言葉は、ソフトカバー版の第3巻、416ページにあった言葉で、16世紀のスペインの王様だったフェリペⅡ世に冬場に艦隊を海に出すことは危険極まりないと助言する海軍の提督について言っている言葉ですが、最近の政治家の専横ぶりを思い起こして、思わず笑ってしまいました。

 もう一つは、4冊目の171ページにある次の言葉。

 「ごく少数の金持ち(おそらく5パーセント)と大多数の貧しい人々の間に格差があり、この少数の人々と圧倒的な多数の人々の差はどんどん大きくなっていく。」

 彼がドイツ軍の捕虜収容所で博士論文を起稿し、1947年にこの論文により博士号を取得し、その論文を元に「地中海」を公刊したのが1949年。現在のように多くの図版等を加えた第2版が出版されたのが1966年、つまり上に紹介した言葉はおそらく戦後の高度成長期の前に執筆されただったと言うことを、まずここで注意していただきたいのです。

 そして、そのうえでトマ・ピケティが「21世紀の資本」で厳しく指摘していることは、戦後の高度成長を通じて先進国は豊かになったけれど、その成長はすでに停止している中で、依然として上位5%の高額所得者とそれ以外の層の間に大きな開きがあるとした指摘した上で、これら上位5%に人々、とりわけ最上位の1%の人々に高度な累進課税を行うことで、貧富の格差を解消することが政治の責務であると指摘しいるということを思い出していただきたいといます。

 ブローデルが調べ上げた16世紀も、私たちが暮らす21世紀も社会の構造、所得の配分の構造が変わっていないと言うことに、私としては驚きを覚えざるを得ません。

 支配者はなぜ専門家の意見を聞かないのか、それはひょっとすると、5%の既得権を失いたくないからかもしれません。

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