宗教改革・グレゴリウス改革・ロックンロール

 F.グイッチャルディーニの「イタリア史」は10年ほど前に日本語全訳が出版され、この訳業はまことに偉業と賞するべきだと思います。
 ただし、いかに訳文が良くこなれているとは言えども、ハードカバーで全9巻、お値段も4万円を超え、けしてお手軽に読める本ではありません。

 そこで、ちょっとしたつまみ食いをご提供しようというわけですが、ここで注目するのはローマ教皇です。

 この本は、1,492年から1,534年までのイタリアを舞台とした諸勢力の群雄割拠の歴史をほぼ月報レベルで克明に描いていて、ローマ教皇も世俗諸侯に混じって権謀術策を巡らし、戦火を交える人物として随所に登場します。
 その筆が描くローマ教皇は、世俗諸侯と比べて特に信仰深い人物ではなく、むしろ1,500年の聖年にローマに殺到する巡礼者を当て込んだミサに奔走したり、聖務停止などの教権を奮って諸侯を圧迫する姿です。
 おそらく、著者グイッチャルディーニも、当時の多くの人々と同じように、世俗諸侯と同じような野心と欲望にまみれ、堕落した教皇に失望しており、このような社会的理解が宗教改革を産み出したのだなぁ・・・と、この本を読んでいると実感できます。

 ところで、教皇がなぜ堕落したのかというと、もちろん、教皇といえども色も欲もある人の子だったということであり、世俗諸侯、例えばメディチ家が自らの一族を教皇座に送り込もうとしたからということでもありますが、しかし、歴史的にその淵源を探るとどうなるでしょうか。

 実は、この時代を遡ること約5世ほど前、11世紀にグレゴリウス改革という教皇から世俗諸侯に対する大攻勢があったということを、イリイチの本をきっかけに最近、学びました。
 教会が世俗諸侯と肩を並べ、頭ひとつ飛び抜けようとしたのが、どうやらこの時の改革だったようですが、この改革についてネット検索して発見した赤阪俊一先生の以下の論文がとても参考になるので、是非お読みいただきたいと思います。

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=6&ved=2ahUKEwj42rezksvnAhWO7GEKHR7xBEgQFjAFegQIBBAB&url=https%3A%2F%2Fsaigaku.repo.nii.ac.jp%2F%3Faction%3Drepository_action_common_download%26item_id%3D513%26item_no%3D1%26attribute_id%3D73%26file_no%3D1&usg=AOvVaw2j0W-cXaqKf4W2cbtVQ14y
(いきなりPDFをダウンロードする場合もあります、念のため)

 教会が子羊を養い、その一致を確保し、財源的にも安定を図るために力を尽くすことは御心に適うことですが、その働きをこの世で行えば当然に世俗諸侯と同じレベルに落ちていく、と言うことがこの論文とグイッチャルディーニにあわせ読むと、とてもよく分ります。
 そして、このことは今日の教会についても、目に見える教勢拡大や、社会改革を追求する限り同じ事が起こることを示唆しています。

 ちなみに、上に述べた教会の堕落の先に宗教改革という大きなウネリが産まれ、その先駆者としてのヤン・フスやサボナローラ、絶頂期のスーパースターであるルターやカルバン、ツヴィングリたち、そして再洗礼派に対する迫害という一連の流れが、まるで世界的な高度経済成長を背景としたロックンロールの歴史、チャック・ベリーやエルヴィスに端を発し、ビートルズやストーンズを産み、やがてピストルズやトーキングヘッズへと拡散していく流れと重なり合うように見えてきて、とても新鮮な発見を与えてもらったのも、思わぬオマケの喜びでした。

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