「超実体的な」パン


 主の祈りの以下の部分について、ネットで調べるとAがカソリック、Bがプロテスタントの一般的なようですが、その内容に大きな違いはありません。

 A わたしたちの日ごとの糧を今日もお与えください。
 B 我らの日用の糧を今日も与えたまえ

 しかし、「中世思想原典集成 精選 6」を読んでいたところ、「私達の超実体的なパンを今日も私達に与えてください」という一節に出会いました(314ページ)。

 そこで、注釈に従ってBiblegatewayでウルガータ版のマタイ6:11を見るとなるほど、以下のように書かれていました。ついでに英語版と仏語版を並べてみます。

Panem nostrum supersubstantialem da nobis hodie(VULGATE)
Give us this day our daily bread(NRSV)
Donne-nous aujourd'hui notre pain quotidien(LSG)

 注釈によると「超実体的な」は「supersubstantialem」の訳語だそうですが、英語版や仏語版、また、冒頭に引いた日本語版と比較すると、「supersubstantialem」はギリシャ語原典にはない、かなり大胆な意訳であると思われます。

 しかし、そうはいいつつも、なかなかに味わい深い名訳だと思います。

 この翻訳を作った人たちは修道士であり、祈りと奉仕の共同生活を送りながら翻訳作業に取り組んでいたことでしょう。

 そして、彼らが日々、口にするのは、また、口にしたいと願うのは聖体、つまり、単なる可視的、可感的な実体(substance)としてのパンではなくて、永遠の命に至るキリスト・イエスの肉としての、実体を超えた(super)パンだったはずです。

 今、私が主の祈りを捧げるとき、また、聖餐に与るときに、果たしてウルガータ版を作り出した人々のような霊的な渇望を抱いているだろうか、と自省し嘆息してしまうのでした。

*「超実体的な」というような分りにくい知的営為を巡って教会の中に様々な罪が生まれたことは事実ですが、それについて語ることは私の能力を超えています。お許しください。

中世思想原典集成 精選6 大学の世紀2 (平凡社ライブラリー) - 上智大学中世思想研究所
中世思想原典集成 精選6 大学の世紀2 (平凡社ライブラリー) - 上智大学中世思想研究所

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