負うた子に叱られる!?


 ルカによる福音書11章19節を新共同訳は以下のように訳しており、新改訳もほぼ同様です。
「わたしがベルゼブルの力で悪霊を追い出すのなら、あなたたちの仲間は何の力で追い出すのか。だから、彼ら自身があなたたちを裁く者となる。」

 一方、文語訳は以下のようです(略字に変換、一部をのぞきフリガナは省略)。
「我もしベルゼブルによりて悪鬼を逐ひ出さば、汝らの子は誰によりて之を逐ひ出すか。これ故に彼らは汝らの審判人(さばきびと)となるべし。」

 お気づきでしょうか、新共同訳は「あなたたちの仲間」、文語訳は「汝らの子」にやがて裁かれる、と言っているのです。

 前者の訳なら単なる仲間割れという話ですが、後者の訳なら何の罪科のない子供や孫に累を及ぼし裁かれる、という厳しい話になります。

 ひょっとすると、今日の私たちに、例えば国際平和の確立に、あるいは、環境保全に、子供や孫の世代から裁かれるぞ!と指摘する神の言葉かもしれません。

 そこで、「仲間」と「子」のいずれが適訳なのでしょうか。

 ギリシャ語はわかりませんので、例によってBiblegatewayを開いて、とりあえずフランス語訳を三つ見てみます。最初の二つの訳ではfils=息子、という訳語を当てており、三つ目の訳はdisciples=弟子という言葉を当てています。
 Disciplesという言葉が12弟子をさす言葉でもあると言うところも面白いですし、また、この3つの訳が、この単語のたった一カ所を除くと、他はまったく同じというのも面白いと思います。

仏訳 その1 Nouvelle Edition de Genève – NEG1979 (NEG1979):
Et si moi, je chasse les démons par Béelzébul, vos fils, par qui les chassent-ils? C’est pourquoi ils seront eux-mêmes vos juges.

仏訳 その2 Louis Segond (LSG):
Et si moi, je chasse les démons par Béelzébul, vos fils, par qui les chassent-ils? C'est pourquoi ils seront eux-mêmes vos juges.

仏訳 その3 Segond 21 (SG21):
Et si moi, je chasse les démons par Béelzébul, vos disciples, par qui les chassent-ils? C'est pourquoi ils seront eux-mêmes vos juges.

 次に英訳を四つです。2番目から4番目まではsons、またはchildrenを当てていますが、一番面白いのが最初の訳です。
 この訳では仲間でも息子でもなく、exorcistsと訳した上で、脚注gを参照するように促して「Gk sons」、つまり「ギリシャ語 息子たち」と注釈しているのです。

英訳 その1 New Revised Standard Version:
Now if I cast out the demons by Beelzebul, by whom do your exorcists[g] cast them out? Therefore they will be your judges.

Footnotes g Luke 11:19 Gk sons

英訳 その2 21st Century King James Version (KJ21):
And if I by Beelzebub cast out devils, by whom do your sons cast them out? Therefore shall they be your judges.

英訳 その3 Douay-Rheims 1899 American Edition (DRA):
Now if I cast out devils by Beelzebub; by whom do your children cast them out? Therefore they shall be your judges.

英訳 その4 1599 Geneva Bible (GNV):
If I through Beelzebub cast out devils, by whom do your children cast them out? Therefore shall they be your judges.

 聖書の訳語の適否を多数決で決めるべきではありませんが、以上の7つの訳から総合的に判断すると、「子」と訳する方が、より原意を活かした訳のように思われます。

 神の言葉の射程の長さには本当に恐れを抱かざるを得ません。

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