ドゥルシラ・コーネル「”理想”を擁護する」をお読みください

 アマルティア・センの「正義のアイデア」の中で言及があったので、図書館から借りて読みました。

 具体的な結論があるのではありません、しかし、ヒントがたくさんある、という意味ではぜひ多くの方にお読みいただきたいと思いました。

 第1章と第2章は湾岸戦争、9・11、イラク戦争という時代に正戦論、つまり正義の戦争 Just Warを主張する人々への反論。

 それまで、左派リベラルとして活躍していた人がイラク戦争と第二次対戦を「正戦」と主張していたということに、ショックを受けました。

 米国に正戦論がある限り、彼らは本音を隠して戦争を続けるだろうし、それは日本についても対岸の火事ではないだろうと思いました。

 第3章から第5章まではグローバルな正義論を巡る考察で、ロールズ、センなどの議論をコンパクトに要約しており、とても勉強になったと思います。

 第6章はアフガニスタンとセルビアにおけるフェミニズムの紹介、第7章は国際的な養子縁組を考察していて、いずれも未知の分野でしたので、とても刺激的でした。

 しかし、本書の掉尾を飾る、この2章の隠されたテーマは女性のジェンダー的な力としての「哀悼」です。

 実は、著者はこの本の最初の方、第1章の正戦論に対抗して哀悼、つまり祈りを主張しており、私がこの本をオススメするのはまさにその点にあるのです。

 ラカンや精神分析に関わるところはやや読みにくい印象でしたが、全体としては翻訳も良く出来ていて、読みやすい本だと思いますので、ぜひぜひ、手に取ってお読みください。お奨めですよ!

“理想”を擁護する――戦争・民主主義・政治闘争
“理想”を擁護する――戦争・民主主義・政治闘争

 

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