賃金決定の恣意性を放置しない


 2月17日の行商人のおばあさんのお話と9日の大根のお話を通して、商品の価格が何らかの法則性に沿って定まるのではなく、恣意的に、ある意味、いい加減に決まっていることを説明しました。
 だとすると賃金は?ということが、次なる疑問ですが、多くの方は、むしろ賃金こそ恣意的に定まっていると感じているはずです。

 野菜やお魚のお値段が恣意的に定まっても、それほど大きな問題ではないでしょうし、まして社会正義を論ずるようなものでもないでしょう。
 しかし、我が国では人口の約半分、6千万人が賃金に生活を依存していることを考えると、賃金について別物、と考えるべきでしょう。
 まして、成長の停止に伴って貧富格差が拡大している一方、多国籍化した大企業の経営者が億単位の報酬を得ているという実態を考慮するなら、賃金決定の恣意性を放置しておくことは適切ではないし、社会正義に反するとすら考えられます。

 それでは、賃金決定についてはどのような規制や介入をすることが適切でしょうか。

 まず、企業経営の目標はその所有者、株式会社であれば株主の利益を最大化することにあります。
 そのためには総売上にしめる経費を最小化し、そこから生ずる利益を最大化する必要があります。
 だから、経営者は原材料や設備維持費用を買いたたくように、賃金を最低水準に維持しようとするはずです。
その結果、賃金決定の恣意性を放置すると、賃金は低下の後に下方硬直し、逆に、株主配当や役員報酬は上昇の後に上方硬直することになり、これが貧富格差の固定を生むことになります。

 現状の我が国の法律では、賃金の下限は最低賃金法によって定められており、近年は時給1,000円、または1,500円を目標とした労働組合などの関係者の努力により900円台まで引き上げられています。
しかし、そのような取り組みも、残念ながら、全体的な賃金水準の上昇をもたらしませんでしたし、その一方で、大企業の収益が高水準を維持し続けました。
 このことは、企業収益の中で賃金の原資として割り当てられる部分を拡大しない限り、最低賃金をいくら引き上げても、結果としては賃金の高い層から低い層へ分配を変更しただけ、全体として下位平準化しただけだった、ということを示しています。

 つまり、賃金全体をかさ上げしようとするなら、企業収益の内、利益となる部分、つまり株主配当と役員報酬となる部分を圧縮して、賃金の原資に再配分しなければならないのです。

 そこで、具体的な対策案を、賃金を決める立場の者をどう規制するのか、という観点から提案します。

対策案1 役員報酬を住所のある地域の平均賃金の3倍程度までとする。これを超えた部分は、税として徴収する。

対策案2 年齢や世帯構成を考慮した生活給に資産形成分を加えた標準賃金を地域ごとに定めて、これを下回る賃金水準の企業には、役員報酬および株主配当の支払いを停止させ、税として徴収する。

対策案3 賃金を硬直させた結果、労働時間が延長されることのないよう、労働時間規制を厳格化し、行政指導を強化する。

対策案4 海外からの企業買収が起きないよう、株主配当は、額面額に前年度の経済成長率を乗じた額を上限とする。

対策案5 対策案1の役員報酬の倍率と対策案4の配当の上限比率は現行水準を勘案した水準から初めて、10年ほどかけて引き下げていく。

 これ以外にも小規模事業者や個人事業主のために、対策案2の水準を基準とした所得税の還付制度や、生活保護や失業補償の引き上げに伴う原資確保のための土地家屋からの所得、いわゆる家賃収入に対しする高い累進性を持った課税制度などを整備する必要があると思います。

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