頭を冷まして「頭」を冷やす Part5 「頭」を冷やすための具体策

 それではどうするか、ということについて、1970年代に「プラグを抜く」という提案をしたのはイヴァン・イリイチでした。(注1)
 この提案を私の述べてきた説明に沿って言い換えるならば、「頭」を切り落としても息の根を止められないなら、ある程度、継続的に「頭」に冷や水をかけて、「頭」を冷ましてやる、と喩えてみたいと思います。
 つまり、資本主義経済が2階部分の物流と金融の流量や速度を拡大し、そこから得られる自らの利益を極大化しようとするなら、そして、そのためにルールを改変しようとするならば、政策的にその速度や量を減らそうとすること、つまり景気拡大を図るのではなく、景気を後退させること、これが最善の選択だと思います。
 では、具体的にどのような政策をとるべきかというと、最低賃金額の大幅引き上げと、労働時間規制の大幅強化をセットで実施することです。
 まず労働時間について言うなら、基準法を改正して、週40時間を超える残業を一切認めない、認められるのは政府が大規模災害に認定したような非常事態に限る、というルールにすべきです。
現在は、労使合意があれば自由に、ほぼ無制限に労働時間を延長できるルールですが、労使が対等に合意形成できる環境にない以上、また、未組織労働者が増加している現状を考慮すると、このルールは一方的で不公平だ、というような理屈づけで説明すればよろしい。(注2)
 その上で、普通に豊かに暮らすために必要な賃金額を例えば、月20万円とか30万円とかに設定し、それを月160時間で除した金額を最低賃金として設定することです。
 つまり、最低賃金20万を160で除して時給1250円、あるいは30万なら1875円としようという提案ですが、当面は間をとって1500円というあたりが目安でしょうか。
 厳しく労働時間を規制した以上、その限られた労働時間で豊かな生活を維持していくためには最低賃金の引き上げが必要になるのは当然です。
 現在、最低賃金を1000円にするための運動に労働組合が取り組んでいますが、「頭」を冷やすという点では全く効果がありません。
 なぜなら名目物価水準と実質名目物価水準があるように、結局は名目賃金を押し上げるだけで可処分所得そのものを押し上げるだけにとどまるでしょうし、頭を冷やす当観点からは意味がないのからです。
 だから、最低賃金(及び生活保護の最低基準)の引き上げと労働時間の厳格な規制とはセットで実施に移す必要があるのです。
 そして、それ以上に、この二つをセットにすることで資本主義経済の過熱を冷やしていくことが大事なのです。

(注1)つまり私が考えたことではなく、教えをうけたもの、ということをお断りしたいのです。その上で、ここで、イリイチについての詳しい話に寄り道することは控えますが、興味のある方は『エネルギーと公正』(晶文社、1979年)を参照して下さい。
(注2)20世紀の初めのニューヨーク港で労働組合と港湾荷役会社が通じ合って港湾労働者を搾取し、これに異を唱えて労働運動を展開しようとした運動リーダーをマフィア(労働組合の幹部の兄弟だった)が殺害するような事態に発展したときに、米国政府は労使間に立って、労働条件を調整する制度を創設しました。これと同じことが必要だ、ということです。「支配者は誰か : 第2次世界大戦後のニューヨーク港湾地区における権力闘争の考察」南 修平著 (https://nagano-kentan.repo.nii.ac.jp/index.php?action=pages_view_main&active_action=repository_action_common_download&item_id=481&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1&page_id=13&block_id=17)を参照して下さい。

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